S・K君 希望の年明け
10年前、通所先で他傷をうけ人間恐怖症のようになってしまった後、回復してきたので楽しい人の輪の中で過ごす時間を作りたいとお母さんがS・Kくん(当時24才)の事で相談にみえた。
レンガの家のソフトスポーツに在籍し様子をみることとする。
初めの2・3回こそ緊張していたが次第に笑顔が見え積極的とはいかないがルールを理解し楽しんでいる様子がうかがえるようになった。
次のステップで地域の実習所への通所がきまった。3ヶ月位した頃、他のメンバーから他傷を受けたのをきっかけに、また人間恐怖症になる。表情を変えずソロソロと後ずさり、ちょっとした変化で血圧は180を超える。身体的疾病はないとのことで頓服の安定剤を服薬する。
ゆきわりそうの日中活動で他傷行為が無い穏やかなグループをさがし精神障害者小規模作業所ドンマイに週に2日通所する事になる。その後、お母さんの同年代の人と過ごさせたいとの希望もあり、「ジャックと豆の樹・風(知的障害者デイサービス)」に移行した。この頃の彼はまだソロソロと後ずさる事が多く血圧の上昇も頻繁で、イベントには一切参加せずに出来るだけ静かな生活をする。
生活の場が自宅から夢みる館(グループホームケアホーム)にうつる。その後、制度の変動で「ジャックと豆の樹・風」が「ポシェットとドンマイ(生活介護)」に移行する。移行を期にグループ編成を少人数にした(スペースの関係も有り)。2年を経て様々な変化が見られるようになった。
徐々に血圧上昇が減り現在頓服の服薬は1年以上ない、最近は横になりお昼寝をする程安心する時間が作れるようになってきた。昨年の秋にはご家族も心配した船と飛行機を利用する2泊3日の八丈島旅行も楽しめた。なんと船の中でもぐっすり熟睡!
お付き合いが始まり約10年、今の彼の穏やかな様子は人の心をについて深く学ばせてもらった。そんなS・Kくんの今後の課題は、日常生活動作の低下を取り戻す為にどう取り組むかだ。
靴を履く・食事をする・着替える・トイレに行く。どの動作も途中で意識が途切れてしまいストップしてしまうかと思えば突然復活しまわりを見ないで行動を再開する。年末には部屋の隅から靴を履きに玄関に突進、座りながら靴を履いていたメンバーを踏みつけて転倒という事もあった。
今後は、回りの安全確保をした後、意識が途切れないように分りやすいスローステップな声かけをしてみよう等と、支援方法を検討した。週に一度お父さんが迎えにくると、驚くほど意識が高くなる。トイレに行く、カバンを持つ、靴を履いて車に乗る。脳萎縮が若干見られるとの医療的見解もあるが、彼の心を開く為の新しい年を迎えたい。
サービス管理責任者 東 哲朗