■祈りのつどいに出演する2つのグループの活動について
8月23日のプログラムに参加する2つのグループ「劇団みつばちブンブン」と「私たちは心で歌う目で歌う合唱団」の、それぞれの活動背景をご紹介します。
●劇団みつばちブンブン(演劇:不戦賛歌)
~イメージトレーニングから始まった感性の世界づくり~
もう10年も前になるだろうか?
……玉子のカラの中にみんないるんだよ、玉子のカラは固いね、中はせまいね、
小さくなって 小さくなって
あれ? 少しづつ玉子のカラが割れてきたね、バリ バリ バリ 割れた、割れた
ほら空が広いね、風が吹いているね、いろんなものが見えるね、
手をぐるぐるまわしてみよう――
気持ちがいいね
笑いたくなるね
さあ 叫んでみようよ、ウワァ……
三浦先生の声と、そして軽やかな音楽の流れている小さな部屋で、知的障害者通所授産施設「みつばちブンブン」のメンバー12名はそこに空を見、風を感じた。
感性を育てるこのイメージトレーニングは、悲しみ、怒り、喜び、それら内なる感性に身体意識を重ね育む大きな力を持つ療育であった。そこで涵養された身体表現は劇団活動という場を得たことで更に輝きを増すこととなった。
今日、彼等はおだやかな広場での楽しい時を、考えてもみなかった爆音にさらされ、恐ろしさの中で必死になって逃げ惑う。死の恐怖におびえながら。
イメージトレーニングによって育まれた感性は、「助けてよ! 助けてよ!私の平和な生活を壊さないで!」と叫ぶ、必死に叫ぶ。
余りにもリアルで芝居という枠を超え、私たちの心に戦争への拒否を伝えるものとなる。
地球上の様々な地域で戦争により起こった荒廃と悲しみを伝える後半のスクリーンは、私たちの涙を誘う。
10年に亘って培われた障害者の持つこの感性と表現力は、世界中にこれからも拡がっていくであろう不条理な戦争への断固とした拒絶を強く訴える。人類にとり平和のみが人権であることを伝えるこの「不戦賛歌」と、十年にも亘るイメージトレーニングの歴史に敬意を表したい。
●私たちは心で歌う目で歌う合唱団(交響曲第九番 合唱 第四楽章「歓喜の歌」
…1989年の秋でした
「障害者が『第九』を歌うから指導して下さい」といわれておいでになった、新田光信・瀬尾美智子両先生は、集まっている障害者の集団を前に、ただ驚かれるばかりのご様子でした。
「言葉や声の出ない障害者が、世界一難しいといわれる『第九』の合唱部分をどのように歌うのだろうか」音楽家としての立場では考えも方法も及ばず、途方にくれたと後に語られました。
「第九をやろう」の呼びかけに
「大工の弁当はどうやって作るの?」
「トンカチもって何のリハビリやるの?」
といっていた当時の障害者たちは、今、新田先生の編曲された「第五パート」を自分のものとし、舞台から生命の証しとして歌い連帯感を呼びかけるまでになりました。
共に歌う支援者の方々や厳しくも愛をこめて指導された新田先生のお力で、私たちは国
外、ドイツ、ニュージーランド、ニューヨーク・カーネギーホールなどの演奏にも出かけました。
今日、「第五パート」を加えた5部合唱の『第九』を日野原先生に贈る光栄を誇りに思います。
「ゆきわりそう20周年」の歴史的な記念すべき事にもなる世界にたった一つの第五パートを持つ歓喜の歌に幸あれ!
平和のために、連帯のために「アーレメンシェン ビールデン ブリューデル(みんな兄弟になろう)」が山を越え、海を越えて世界中に届きますように。